だからね、俺、言ってやったんすよ。
そう、得意気に話すのは去年、うちの部に配属された若者だった。仕事も早いがキレるのも早い。
そんなとこで餌、やんなって。ここは天下の往来で、アンタが餌やるのは勝手だけど道が汚れるじゃねえかって。
彼が言っているのは隣の会社で働いている、おっさんの事だろう。いつも昼休みに曲がり角にあるスペースで弁当の残りを日課のように撒いている。雨の日にも、風の日にもだ。ほとんどが雀がついばんでいるが、時々セキレイもきて走る姿が可愛い。今では昼近くになると、そのスペース上の電線には雀がびっしり待つようになっている。


俺は彼の話を苦笑して聞きつつ、どうせ八つ当たりをしただけだろ? と言うと彼は首のあたりを決まり悪そうにかいた。まあ、そうなんですけど聞いて欲しいのはここからです。

仕事も終わり、駐車場まで行くと俺の黒い車が白くなってたんです。
分ります? つまり鳥糞まみれだったんです。何十羽って数じゃないと思います。何百って単位でしょうね。呆然としましたもん、俺。まあ、それも束の間で直ぐに怒りがこみあげてきたんですけど、ある事に気付いて今度は血の気が引きましたよ。うちの会社で車通勤してるのは大体、二十人ぐらいですよね。部署によって帰り時間が違うから、十台ぐらいしか残ってなかったですけど、俺の車だけだったんですよ。やられてるのって。直ぐに昼間のことを思い出しました。


鳥って人語を理解するんすかねえ。


真偽の程は分らない。けれど、彼の車が白くなることはそれから無かったし、彼は少し大人しくなった。
おっさんは場所を変えて今日も撒いている。