2004-01-01から1年間の記事一覧
かまいたちが起こした風に、馬車馬のように働きずめの毎日から、 おさらばしようと山吹色した落葉に蟻のイチ助は飛び乗った。 振り落とされないように日頃、鍛えた六肢でしかと捕まり追っ手の届かない所まで。 いつも見上げればあった天辺の淵が、ほら、こん…
向かいの猫山さん家のポストに、履いてたふんどしが逃げた。あれは一反木綿じゃないのかとの旨を回文にして投函しておいた。 仕事から帰ってくると卓袱台の上でボロ切れのズタ切れになった木綿が泣いていた。木綿が嗚咽まじりに手紙を渡すので、何かと見てみ…
南の方から積乱雲に隠された天空の城を見てきたのだと言う、ブルドッグみたいな顔した車掌さんは、たおやかにパイプをくゆらせていた。これから死海に向かうのだという。 プカプカ浮きながら地ビールでも飲むのだと笑う。なるほど、死海なら車掌さんの大きな…
石畳は針葉樹の落ち葉で埋めつくされ、色鮮やかな絨毯を作り、くたびれた革靴に疲れたパンプス。おぼつかないヒールとカラフルなスニーカー。オイルドブーツに駆けてゆくジョギングシューズが踏み鳴らしていく音は巡りゆく季節を優しく貴方達に語りかけてい…
波間に消えようとする今日という日をオールを漕いで追いかける小舟は真っ赤な夕日に照らされ、どっぷりと陽が沈む頃には何処にも小舟の姿は見えなくて、ただまん丸い月が波間に揺れていた。
風呂も入って夕食を済ませ一息ついてた折に煙草を切らしてしまったので、食後の運動がてらに外にでる昼間のうだるような熱気は無く吹き抜ける雨の匂いのする風が草花を微かに揺らせ、虫がリリリリと鳴くのと合いあう様は 何かの絵本で読んだ御伽話を思いださ…
部屋に立ち込めるアナスイの匂い。背の高い家具と余計な装飾が嫌いなチビでヒステリックなキミの匂い。肌を重ね合わせ 今はスペルマの匂いが中和された部屋。 まっ暗な部屋が嫌いなキミの部屋には灯りが絶やされる事はない。籐で作られたランプシェードが壁…
伊坂幸太郎が著「オーデュボンの祈り」「陽気なギャングが地球を回す」読了 アンテナ登録サイト 入れ替え
その晩はさ眠りもせずにウロウロと部屋中を動き回っていたよ いつもなら寝てしまうと中々起きない俺の為に 番犬である事を選んだ彼は玄関で丸くなってるのが常なんだけど その日だけは眠れないのか 或るいは何かを感じとっているのか 恐らくは そのどちらで…
仕方ないことだとも解っていたことだけどもアンテナとかリンク外されると凹むね ははは〜ん
午後10時22分 自虐行為に過ぎない何ら手当ても出ない というボランティア残業を終える抱えている仕事に蹴りがついたらまとまった休みを取ろう ポマードでテカった油虫がどんな顔をするのか見物だ 昏いグレーに塗り潰された空に不規則な光が瞬く 夕方に強…
日常は常に琉転しており一秒とて同様の形状を保っていることはない。時間という概念は酷く曖昧で、ありとあらゆる万物は逃れること、叶わない。 そう、我々は時という概念の中で生き、形骸という過ぎし時を産み出しているに過ぎないのだ。
何が恐ろしいって? このまま誰にも思い出される事なく朽ち果てていく事でなく 連絡手段を失って尚、困窮するでもないマイ・ライフ この世は仮初めだと言ったのは行方をくらました友人 否定もしないが肯定もしない ただ蔑む その弱さを俺は蔑む 無駄な足掻き…
衝動的に 手にしてた携帯を川に投げてやった そうすることで無常に続いてる今を変えれそうな気がしたから結果をいうと何も変わらなかった 否 変えれなかった 予定調和に終止するシナリオの最後に記された台詞 だろうね だってさ
午前4時を回った頃に片付けが終わる 零時を過ぎたあたりから始めて時間がかかったものだ シェルフに乱雑に積んであった酒類を移動 ベースとなるジンやウオッカ、テキーラ等を3段目に置き ブルーキュラソーとかレモン、チェリー リキュールを2段目に配置す…
DISさん>盆ということもあり「賽石」を書いてみました。如何なもんでしょうか。名無しさん>渋いですか。ありがとうございます。あの作風で掌編を書きたいのですが今だ成功しておりませぬ。
サイドボードの上に散乱するビールの空き缶と 山となった吸い尽くされた吸殻が昨夜の残骸 今だアルコールから覚めていない思考でぼんやりと眺める 部屋からは退廃じみた匂いが立ち込めていて 4個ある置き時計は てんでバラバラな時間を刻んでいる シンクの…
イカしたキャデラックはスパンコールを散りばめた真っ黒ボディ。 ある日。近所のジャンキーがキャデのルーフをぶった切っちまった。 理由を尋ねたら「暑いから」ああ。そうか。と、納得したのもきっと暑いからに違いない。そうに違いねぇ。 0時を回った頃に…
静まった街を歩いてると、この世界に自分だけしかいないような錯覚がする。人間関係が稀薄な世にあって、誰もが実態のないゴーストみたいなものだから、あながち一人ってのは間違いじゃないのかもしれない。
うだるような日中の暑さが過ぎ、頬を撫でる心地よい風は煙草の煙を後方へと流し去った。 今だアスファルトに蓄積された太陽熱は立ち昇り陽炎となりて現見を残すが落日とともに消えるだろう。 蜩が木々から飛び去った。 待ち構えてたかのように、一羽の燕が其…
私はホテルを飛び出した。 背中に彼の声が聞こえてきたけども構っちゃいられない。 道ゆくカップルが道を譲る。私の形相が怒りに歪んでいるんだろう。 どれぐらい歩いてきただろうか。私はようやく後ろを振り返った。 当然の事ながら彼は追いかけてはこない…
気付くと僕は、電話ボックスの前に立っていた。 街灯も何もない闇にあって、電話ボックスだけが色を持って浮かんでいる。どうして、こんなところにいるのか?とか、ここは何処なんだ?とか頭を捻っても答えを知る記憶が欠落してるのか、答えを導きだす事は出…
夜の終わりを告げる。街で一番の早起きの小鳥が朝靄を求めて飛びたつのと蝙蝠が塒(ねぐら)に帰るのは、大体が同じで。未だ明けきらぬ、薄いブルーに融けゆく空は見えざる者を 、うっかり置いていかないように手を引いて。 こうして、いつもと変わる事がな…
ついぞ5分前には無かった風が窓を叩く音。カーテンを閉めているので外の様子は窺がいしれないが、聞いてるぶんには吹きすさんでるようだった。一雨来るのかもしれない。 だとしたら、家の前を流れる川に少しぐらい、水かさが増えたらといいと思う。この所、…
これといって特徴のない、くすんだ高層マンションが1から5までの番号を振り分けられ横並びで建っている中、妻の人が住居に選んだのは3番と振られた棟であった。高層マンションというのは兎角上になるにつれて風の影響を受けるもので、下の砂道にシャツや…
先日から街全体を覆っていた雨雲が何処かに行き、久方振りに姿を現した空は澄んで見えた。梅雨の中休み。お天気お姉さんがそう言ってるからそうなんだろう。 それでもまだ街は湿地帯のままで車も泥だらけのままなんだけども、真ん丸い月が笑っているから、ま…
元は真っ白な壁だったのだろう。 大きな窓から、さしこめる西陽が幾年を費やし白い壁をくすんだ色へと変えたのだろうか。彼は逝ってしまった。固いベッドに横たわり眠るようにして静かに人生を終えた。 私の中に彼が居た証明を残して_____ 悲しみに暮れ…
何をやっても上手くいかない日というのはあるもので。そんな日は大体に措いて目覚めた時から、自分を取り巻く何かが違うものだ。 この日もそうだった。見慣れた光景に違和感を感じ、通い慣れた道を蹴る4輪のタイヤの感触に異質さを覚えた。 いつも見かける…