2004-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ペケペケ

向かいの猫山さん家のポストに、履いてたふんどしが逃げた。あれは一反木綿じゃないのかとの旨を回文にして投函しておいた。 仕事から帰ってくると卓袱台の上でボロ切れのズタ切れになった木綿が泣いていた。木綿が嗚咽まじりに手紙を渡すので、何かと見てみ…

フーガ

南の方から積乱雲に隠された天空の城を見てきたのだと言う、ブルドッグみたいな顔した車掌さんは、たおやかにパイプをくゆらせていた。これから死海に向かうのだという。 プカプカ浮きながら地ビールでも飲むのだと笑う。なるほど、死海なら車掌さんの大きな…

優しい詩

石畳は針葉樹の落ち葉で埋めつくされ、色鮮やかな絨毯を作り、くたびれた革靴に疲れたパンプス。おぼつかないヒールとカラフルなスニーカー。オイルドブーツに駆けてゆくジョギングシューズが踏み鳴らしていく音は巡りゆく季節を優しく貴方達に語りかけてい…

エレジー

波間に消えようとする今日という日をオールを漕いで追いかける小舟は真っ赤な夕日に照らされ、どっぷりと陽が沈む頃には何処にも小舟の姿は見えなくて、ただまん丸い月が波間に揺れていた。