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元は真っ白な壁だったのだろう。
大きな窓から、さしこめる西陽が幾年を費やし白い壁をくすんだ色へと変えたのだろうか。
彼は逝ってしまった。固いベッドに横たわり眠るようにして静かに人生を終えた。
私の中に彼が居た証明を残して_____
悲しみに暮れる暇があれば、努めて未だ見ぬ我が子にお腹の上から話しかけた。
最近では、お腹を叩いてやると叩き返してくるようにもなった。元気に生まれてくれればいい。
半年後に男の子を無事に出産した。
予定日を過ぎても産まれる気配もなく周囲をヤキモキさせたが自然分娩で産まれてくれたので良しとしよう。
名前は彼の名を一字貰って付けた。
時は経ち、3歳になった息子は甘えん坊で、時折困ることがあったけどパパが居なくても屈折せずに育ってくれた。
「ママは未だ仕事が残ってるから先に寝てなさい」
「やだ。ママと一緒に寝る」
「とか言っちゃって。ホントは一人で寝るのが怖いんでしょう?気が小さいもんねー」
「ち、違うわぁい。ボクはデッカイんだぞー」
「ホントかなぁ?」
息子との他愛もない話で疲れた身体も癒される。
だから、私はふざけて聞いてみたんだ。
「ねぇ。ママのお腹に居た時は暗くて怖くなかった?」
「ママとパパの声が聞こえてたから、ボクちっとも怖くなかったよ」
息子がそう言って笑う。
遺影の彼も心なしか笑ってる気がした。