お前の首をちょんと切る

薄くたなびく雲を配した群青の空の姿は、にわかに、かき曇った。
もうすぐ雨が降る。鼻もそう、教えている。アパートの一階に住む少年が吊った照る照る坊主はどうやら効果を発揮しないらしい。
今頃、あの少年は不穏に曇り始めた空を見上げて溜め息をついてるに違いない。そんな姿がありありと浮かび、僕は、ふぅと溜め息をひとつ吐いた。
駅に着くと案の定、雨が降り始めた。完全に灰色に塗り変えられた空を一羽のカラスが喚きながら飛んでいくのが見え、憂鬱さ加減を増す演出としては些か出来すぎなぐらいだった。
ホームに電車が二分遅れで入ってきた。下車する者は誰もいない途中駅にあって、空席は当然のように無い。発車を告げるベルが急かすように鳴り響くと間髪入れずに扉が閉まる。
ラッシュの時間帯からズレている為か、車内はさほど混みあっていない。ここから折り返しとなる終着駅までの七区間、開くことのない扉にもたれ、窓の向こうに飛び去る景色を目で追うのが僕の日課だ。今日はいつもと変わらぬ景色にガラスに叩きつけられ、弾け飛ぶ雨粒がプラスされている。案の定、雨が降った。言葉にすると、それだけなのに何故か憂鬱に感じてしまう。
雨は嫌いだ。
確固足る理由は無い。けど、『楽しくない』って気分だけで充分な説明だよね、好きか嫌いかなんて。