春よ

ベイブレ人気て凄いですね。今日限り、新機三台入荷。先着八十名様、一人一個。と、いうフレーズにはめられてオープン前から行かされる罠。並んでましたねえ、朝の早くから。正直、ナメてました。整理券が配られ、さしたる混乱は無かったんですが、後から後から出遅れ組が走ってくる、走ってくる。
爺、必死すぎ。婆、うるさすぎ。孫、焦りすぎ。おかん、怒りすぎ。若いお母さん、胸揺らしすぎ。嫁、俺を睨みすぎ。

だからね、俺、言ってやったんすよ。
そう、得意気に話すのは去年、うちの部に配属された若者だった。仕事も早いがキレるのも早い。
そんなとこで餌、やんなって。ここは天下の往来で、アンタが餌やるのは勝手だけど道が汚れるじゃねえかって。
彼が言っているのは隣の会社で働いている、おっさんの事だろう。いつも昼休みに曲がり角にあるスペースで弁当の残りを日課のように撒いている。雨の日にも、風の日にもだ。ほとんどが雀がついばんでいるが、時々セキレイもきて走る姿が可愛い。今では昼近くになると、そのスペース上の電線には雀がびっしり待つようになっている。


俺は彼の話を苦笑して聞きつつ、どうせ八つ当たりをしただけだろ? と言うと彼は首のあたりを決まり悪そうにかいた。まあ、そうなんですけど聞いて欲しいのはここからです。

仕事も終わり、駐車場まで行くと俺の黒い車が白くなってたんです。
分ります? つまり鳥糞まみれだったんです。何十羽って数じゃないと思います。何百って単位でしょうね。呆然としましたもん、俺。まあ、それも束の間で直ぐに怒りがこみあげてきたんですけど、ある事に気付いて今度は血の気が引きましたよ。うちの会社で車通勤してるのは大体、二十人ぐらいですよね。部署によって帰り時間が違うから、十台ぐらいしか残ってなかったですけど、俺の車だけだったんですよ。やられてるのって。直ぐに昼間のことを思い出しました。


鳥って人語を理解するんすかねえ。


真偽の程は分らない。けれど、彼の車が白くなることはそれから無かったし、彼は少し大人しくなった。
おっさんは場所を変えて今日も撒いている。

book「オー!ファーザー」伊坂幸太郎著


あとがきに触れているように第一期な感じのお話です。
自身も父親業をやってるせいでしょうか、息子が可愛いのは非常に分るので、こういう話はいい話です。
その割りには終わり方がすっきりしない無理矢理な感じがしましたが、初期の伊坂作品が好きな方はいいかもしれません。個人的にはグラスホッパー、魔王、ゴールデンスランバーあたりが大好きです。
うん。全くレビューにはなってませんね。

お前の首をちょんと切る

薄くたなびく雲を配した群青の空の姿は、にわかに、かき曇った。
もうすぐ雨が降る。鼻もそう、教えている。アパートの一階に住む少年が吊った照る照る坊主はどうやら効果を発揮しないらしい。
今頃、あの少年は不穏に曇り始めた空を見上げて溜め息をついてるに違いない。そんな姿がありありと浮かび、僕は、ふぅと溜め息をひとつ吐いた。
駅に着くと案の定、雨が降り始めた。完全に灰色に塗り変えられた空を一羽のカラスが喚きながら飛んでいくのが見え、憂鬱さ加減を増す演出としては些か出来すぎなぐらいだった。
ホームに電車が二分遅れで入ってきた。下車する者は誰もいない途中駅にあって、空席は当然のように無い。発車を告げるベルが急かすように鳴り響くと間髪入れずに扉が閉まる。
ラッシュの時間帯からズレている為か、車内はさほど混みあっていない。ここから折り返しとなる終着駅までの七区間、開くことのない扉にもたれ、窓の向こうに飛び去る景色を目で追うのが僕の日課だ。今日はいつもと変わらぬ景色にガラスに叩きつけられ、弾け飛ぶ雨粒がプラスされている。案の定、雨が降った。言葉にすると、それだけなのに何故か憂鬱に感じてしまう。
雨は嫌いだ。
確固足る理由は無い。けど、『楽しくない』って気分だけで充分な説明だよね、好きか嫌いかなんて。

蒐集

男って小物というかオマケみたな物を集めたりしますよね。するよな? 断定。古くはビックリマンシールからペットボトルについてくるフィギュアキャップとか。

そして、女子は得てして邪魔だとか、何に使うん? とか現実を突きつけてきます。するよな? 断定。そして、子供が蒐集するものには何故かケチをつけないわけです。少なくとも捨てろとは言いません。

そんな訳で子供が遊べるものを蒐集することにしました。親と子供の絆も深まり、心の底で澱んでいたコレクタ魂も解き放たれいいことずくめ。まあ、所有者が自分ではないことが若干あれですが、小さいことは気にしない。
そういう事で現在、蒐集してるのはポケモンバトリオです。遊び方云々はググれ。



本日の引き当て